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【躾(しつけ)と勇気づけ】ステージ3:人に愛される

  • 専門家コラム

元小学校の先生で、現在は子供達と関わる先生に向けた塾「未来学園HOPE」を運営されている梶谷希美さんへのインタビューをもとに、親である私たちが持っておきたい”心得”をお伝えするコラム。

”躾と勇気づけ”というテーマでアドラー式子育てを解説する第四弾。
最後のステージ3、「人に愛される」ことについて紐解いていきます。

梶谷 希美さん(のんちゃん)
小学校の教員を10年以上、崩壊クラスの立て直しを毎年行う。先生のための塾「先生塾」を開校したいという目標ができ、起業。その他にも、教育プラットフォーム「未来学園HOPE」の立ち上げ、書籍の出版(先生の時間はどこへ消えた?-仕事の時短仕分け術-/学芸未来社)など活躍の幅は多岐にわたる。

プライベートでは歌うことが趣味。

”人に愛される”とは

躾の3ステージ。
ステージ1の「相手と自分へのリスペクト」を持つことで日々の自信ややる気を生み出し、ステージ2の「自立と協力」によって、自ら行動する力と協調性が養われる。

これらを土台に積み重ねたうえで一番上に来るのが最後のステージ3「人に愛される」ことです。

  • 人に愛されるために必要なことは何か
  • また愛されることでどのようなことが起こるのか
  • 梶谷さんがなぜそれを伝えているのか

お話をお聞きしながら解説していきます。

梶谷さんの想い「人に愛されることは、うまく生きていくツールになる」  

梶谷さん

子どもたちには将来、なるべく生きやすい人生を歩んでほしい。
そのために、自分の身なりや行動が「人からどう見られるか」を躾として伝えています。

人に愛されるには、

  • 人の話を聞くこと
  • 姿勢を良くすること
  • 身だしなみを整えること
  • き文字をきれいに書くこと

これらをとても重要視しています。

基本中の基本のように思えますが、これが本当に大切なこと。
子どもたちに「姿勢を良くしなさい、身だしなみを整えなさい、人の話を聞きなさい。」とよく言う親御さんや先生は多いと思います。

ですが、それはなぜでしょうか?

  • 目を見て頷きながらちゃんと聞くことで信頼を得て
  • 姿勢や身だしなみを良くすることでやる気を示し
  • 文字をきれいに書くことで相手に対し丁寧な気持ちを伝える

それぞれに目的があり、それをすることで自分の印象がどう見られるか、そしてこれらが出来ていることで、将来どれだけ生きやすくなるか。そういったことを伝える必要があるのではないかと思っています。

しかし、子どもたちにただ「姿勢を良く、身だしなみを整えて、話を聞いてて」と言っても、実はうまく伝わりません。
なぜなら、子どもたちの中で何が ”出来ている状態” なのかわからないから。
ですから、一緒にできている状態を作る必要があるんですね。

例えば人の話を聞くにはどうするのか。
子どもたちに、「自分の一番最悪だと思う態度で聞いてみて」と、ペアになって話す側と聞く側に分かれ、実践してもらいます。
悪い態度で聞かれてどう思ったか。また逆に最高の良い聞き方はどうだったか、とワークを取り入れて盛り上げる。

もし子どもがふざけすぎてしまったら、「それはふざけているように見えるよ!相手をきもちよくさせるんだよ!」と軌道修正しながら盛り上げていきます。

そしてクラス中に気持ちのいい聞き方が飛び交うなかで「すごい気持ちがいいね!皆はこの聞き方ができる人たちだよ。こんな風に聞いてくれたら、先生は毎日授業をするのが楽しくて仕方なくなる。ワクワクする。そうすると、楽しい授業になるし、いいことばかりじゃない?」と話します。

相手にとって心地の良い聞き方をすることが大事で、今やったこの聞き方が100点満点という状態を皆で作るのです。

姿勢もそうです。悪気なく姿勢が悪い子もいます。
そんなときは、「やる気がないように見えるんだけど、どう?」と聞きつつ、「やる気があるように見える見せ方をやってみよう」と実際にやってみます。
姿勢をよくすることは、相手の話を聞こうとする姿勢であり、やる気があるように見せる方法であるということを伝えるのです。

そして身だしなみについては、実は重要視しています。
身だしなみは心の状態を表すと思っています。心が乱れると身だしなみが自然と乱れてしまう。
いつも上履きをちゃんと履いている子が、上履きのかかとを踏んで歩いていると、「あ、何かあったんだな」と、サインになるんです。

そういうときに「上履きちゃんとして」ではなく、
「上履き、どうしたの?何かイライラしていることある?嫌なことあった?」と声をかけると、心の内を話してくれることもありますし、そうすることで子どもも「気づいてくれた。見ていてくれているんだ。」という安心に繋がるからです。

普段から正しい身だしなみの状態をつくることで、乱れた時に気づけるサインにしたい。
だからこそ、相手に与える印象をきちんと伝えながら身だしなみを整えてもらうのです。

そして字のきれいさ。
自分のメモなら自分しか見ないものなので汚くていいのですが、
人に何かを伝えるという目的を持ったときに、汚く書きなぐってるとどういう印象を与えるかを伝えます。

字は意識しないときれいに書くのは難しいですよね。
子どもたちが提出するノートなどで字が汚い場合、悪気ないにしても、
「このノートを見ると、先生の印象は、”ふざけるな!お前の為に文字なんか書くもんか!”みたいに見えるけれど、合ってる?」と聞くのですが、そうするとたいてい「いや・・・!そんなことありません!」と返ってきます。

そこで「人に見せるものだから、あなたの印象が悪く見えてしまうのはとてももったいないと思うよ。先生いつもありがとうございますという気持ちがどこかに見えると先生は嬉しいから、次は少し気を付けてみてね。」という声掛けを繰り返すと、段々ときれいになっていくのです。

今回お伝えしたことはいずれも、自分の態度や行動で、人からどう見られるかを知らないことが大半です。
子ども自身が悪くみられたり印象が下がるということをわかったうえで選択した場合は良いと思っています。
ですが、これらが大人になったときに「この人に仕事を任せよう」というような、うまく生きていくツールになる事も事実。

そうやって、子どもたちが少しでも生きやすい人生を歩んでもらえるように伝え続けるのです。

解説
私たち大人も、小さいころ親や先生に

「字をきれいに」
「姿勢を良くしなさい」
「話を聞きなさい」

と言われて育ったかたも多いかと思います。
当たり前にやるものだと思っていたからこそ、その目的まで考えたことはなかったのではないでしょうか。

大人になると、仕事相手をはじめ、恋人、結婚相手、そして親になると子どもの学校の先生、親同士の関わりなど、色々な関わり合いが広がっていきます。
この人になら任せたい、この人となら良好な関係を築ける、という印象を与えることは将来の自分の大きな力になります。

そのためにも、子どもがただ指示を待つのではなく、自分でその必要性に気づいてもらうために目的を伝え、”こんなふうにするといいよ”という出来ている状態を一緒に作ることで、子ども自身もわかりやすく、自然と身についていくものになるでしょう。

最後に

  • ステージ1「相手と自分へのリスペクト」
  • ステージ2「自立と協力」
  • ステージ3「人に愛されること」

挨拶や感謝、謝罪がきちんとできることで、相手と自分へのリスペクトを持ち、自ら考え実践してみることで自信が生まれ、協力しルールを守ることで自らの安心安全な居場所を作り上げる。
そうして、相手ありきのコミュニケーションにおいて、自分の良さを最大限に伝えるために態度や姿勢を整える。

1つ1つを取ると当たり前のことのように思えますが、ただやりなさいと伝えるだけでは指示型の躾でしかありません。

きちんと目的を伝えながら、

  • あなたならできる
  • 自分でできたね
  • いつもありがとう
  • 間違えても大丈夫
  • またやり方を考えよう。

という”勇気づけ”のシャワーを浴びながらされる躾は、自己肯定感を高め、自己表現がしっかりできる子に育ちます。

躾と勇気づけは常にセットで考えます。
どちらが欠けても成立しないもの。
出来ていない時には躾として目的を伝え、出来た時には勇気づける。

そして、私たち大人も完璧でなくていいのです。
完璧な親であろうとすればするほど、うまくいかない時に自分を責め、いつの間にか相手をも責めてしまうことになりかねません。

やってもらえたことにありがとう。
間違えてしまったらごめんなさい。
うまくいったらやったね!
と、私たちも子供たちと一緒に、成長していければよいのではないでしょうか。

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