元小学校の先生で、現在は子供達と関わる先生に向けた塾「未来学園HOPE」を運営されている梶谷希美さんへのインタビューをもとに、アドラー心理学の考え方を活かした、子育てのヒントをお伝えしていくコラム。
【第一弾】ケースごとにみる対処法シリーズのVol.5では、褒めても長続きしない場合の対処法を考えていきます。
プライベートでは歌うことが趣味。
Vol.4で、「褒める」ということについて、「~して偉いね!」という上から目線でなく、
その姿を見て、自分がどう思ったかを伝えるということをお伝えしました。
Vol.5では、何か特定の行為を継続して行ってほしいときの関わり方をお伝えします。
例えば「挨拶」を例にすると、「挨拶をするように言うし、実際に挨拶ができたら褒めるけれど、長続きしません」という相談を教員や親御さんからよく受けます。
ですがここで意識してほしいことは、”挨拶をさせたいのは自分である”ということです。
私も挨拶は必須だと思っています。
それは私自身が「挨拶やありがとうの言葉があれば安心安全の場が築けると信じている」からです。
そこで私は、挨拶の大切さを実感してもらうために、子どもたちに”挨拶のない世界”を体感してもらうようにこんなことを言います。
「これから、挨拶のない世界を体験します、1分間立ち上がって歩き回って、”挨拶なんかするもんか”と思いながら歩いてください。」と。
そうやって実践してみると、クラス全体がなんとなく嫌な空気になる。
そこで、子供達も「なんか、嫌だね」と言い、挨拶がないと嫌な気持ちになるという感覚が生まれます。
そうして次に、”色々な挨拶”を体験してもらいます。
1つ目は、目を見ずに下を向いて小さな声。
2つ目は、ふざけた挨拶。
いずれも、「感じが悪いね」「ムカつくね」と返ってきます。
ここで「いい挨拶、気持ちがいい挨拶ってどんな挨拶と思う?」と子どもたちに聞くと、「目を見て、笑顔で挨拶すること。」と返ってきました。
そうやって実際にその日から実践するのですが、ここまでしても、せいぜい盛り上がるのは3日くらいなのです。
だんだんやらなくなってきたな、と感じたら、「挨拶ワークの成果を楽しみにしてまーす!」と声をかけ、場を引き締める。
その次は、「挨拶競争しよう!」と声をかける。
そのようなことを、しょっちゅうやるのです。
そうやって継続させるなかで、「あんなにいつも言っているのに、今日のあの場面で挨拶をしないというのは、私の中ではないと思った!」と叱ったこともあります。
ちなみに、感情的なものではなくて、「信じていたのに!」という、信頼感を伝えるための「叱る」です。
そういった意図的な「叱る」が、作戦の1つとしてあるのはいいと思っています。
私のなかで、挨拶をさせたい理由が明確にあるので「じゃあ次どうしよう?」という思考に変わり、様々な手法を組み合わせることで、初めて継続が成立するものなのです。
ここでのポイントは、
これらの考え方を意識して持っておくことです。
梶谷さんの例でいうと、ご自身のなかで、挨拶やありがとうの言葉があれば安心安全の場が築けるという信念を持っています。
何かを始めるとき、ましてや大切な子を巻き込むとなると、どうすればよいのか迷うことや気持ちにブレが生じることもあるのではないでしょうか。
ですが、自分自身のなかで ”これは、私がやりたいこと” という意識を持っておくだけで、すべき行動が見つかりやすく、気持ちのブレが少なく済むのです。
大前提として、何のアプローチもなしに継続することは難しいものです。
大人でもそうではないでしょうか。
いつしか記憶の隅に追いやったダイエット・・・
日記をつけようと張り切って買ったほぼ真っ白な手帳・・・・
など、何かしら継続できなかった経験をお持ちの方も多いと思います。
さて、本題に戻ると、相手に何かを継続させたい場合どうすればよいか?ということですが、継続は難しいという前提を知ったうえで、「継続できる働きかけをする」ことが適切な対処法になります。
そして、そのうえで最も大切なことが、①で挙げた「自分がそうさせたいから行動している」ということを明確に持つ、ということに繋がるのです。
結果を相手に委ねるのではなく、自分自身のやりたいこととして捉えることで、どのような結果になっても、自分で責任を持つ。
そのかわり、自分自身で、どこまでやるか ”線”を引くこともできるのです。
「誰がそうさせたいのか?」という考えは、このコラムの中で以降、何度も出てくる考え方です。
ぜひ、普段の子育てで意識してみると、関わり方や考え方が変わってくることを自覚できるはずです。
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