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カウンセリングのヒント:身近な人のカウンセリングはどうしたらいい?その1

  • 寄り添う&心理カウンセリング
  • 専門家コラム

こんにちは、ニシティです。カウンセリング実践コースで講師をしています。
心理カウンセリングを学ぶと誰もが思うこと。

「家族や子どもとよりよい関係を築くのに役立てられないか?」

家族や子どもの部分がパートナーや職場の同僚に置き換わる人もいるかもしれない。
要するに身近な人だ。

カウンセリングを使って身近な人とうまくやるにはどうしたらいいだろう?

私の場合

私はカウンセリング技術をコミュニケーション法と捉えて日常的に役立てている・・・つもりだ。

  • 虫嫌いをサブモダリティで調整
  • 勉強で苦手なことを現場検証、からのスキル不足対処
  • スピーチや発表の内容を幸せ像から逆算
  • 学校で嫌なことをされたときの相談
  • 姉妹喧嘩の情動→認知→行動レベルの対処

などなど、私の「実験」も兼ねていろいろやっている。

人間の性質を踏まえた技術は家族であっても有効。
一方、家族間のカウンセリングは二重関係であり、それゆえうまくいかないときもある。

身近な人のカウンセリングがうまくいくときはどんなときか条件を整理してみよう。

結論

うまくいく条件は次のようになる。

  • カウンセラーが安心安全で
  • クライアントと信頼関係があり
  • クライアントに問題解決の意思があるとき

整理してみると普通のカウンセリングと何も変わらなかったぜ・・・。
解説していこう。

カウンセラーの安心安全が大事だけど・・・

ずばり、カウンセリングの成否に最も影響する条件は「カウンセラーの安心安全」だ。
カウンセリングの土台と言っても良い。

カウンセラーも人間。
安心安全なときだけ、リソースフルに態度をコントロールできる。
共感も、技術も、進行管理もできる。

逆に、安心安全でなくなるや否や、過去の繰り返しパターンが出現しやすくなる。
つまり、うまくいかない。

特に親子関係の場合、ここが真っ先に崩れやすい。
よくある問題を3つに絞ってみた。

距離感近すぎ問題

通常、子どもとの距離感は近い。
子どもが小さいうちは自分と重なり合っていると言ってもよい。

近い距離感で遠慮がなくなると、子どもを自分の思い通りにしたくなる。
子どもが思い通りでないと、安心安全が崩れ、思い通りでないときの「自分の親のパターン」が出やすくなる。

別の言い方をすると、自分が親にされたようなことをしたくなってくるのだ。

利害関係一致問題

さらに、この距離感は利害関係も近くなり、子どもが失敗すると自分が困ることも多い。

例えば、朝、子どもを保育園に送ってから仕事に行こうというとき・・・
子どもが頑固に抵抗したらどうだろうか?

「あんたが保育園に行かないと私が仕事に遅れちまうじゃあね〜かッ・・・!」
「コンチクショウッ・・・!」
となって、子どもの態度が自分の安心安全に直結してしまう。

自分がしてほしくないことをされたとき、自分が安全でなくなる距離感であることに気づいている必要がある。
これは職場の部下などでも同じだ。

疲労問題

仕事でクタクタに疲れて本来なら休みたいとき、それでも家族に関わらねばならないこともあるだろう。
疲労や睡眠不足も安心安全を損なう・。

「おめーら・・・こっちは仕事で疲れてんだッ・・・!」
「テレビ見てねーで、食器ぐらい自分で洗いやがれクソがッ・・・!」

となってしまうだろう。
いずれの場合でも、自分が安心安全でなければ、意識は勝ち負けの世界に突入。

ー自分の思い通りにできれば勝ち
ーできなければ敗北感

という恐るべき二択が始まってしまう。こうなると共感などできやしない。

このように、身近な人、特に家族や子どもに対するカウンセリングは自分の安心安全を保つことがまず課題となる。
これが簡単なようで難しい。

親、兄弟姉妹、子ども、夫婦・・・身近な人ほど難易度が上がる。
と言っても対策はある。

カウンセラーの安心安全をつくるには

上で述べた問題を知ったうえで、対策をしていけばよい。

疲労対策

まずは疲労対策。
自分が疲れているとき、自分のケアを最優先にする。

セルフカウンセリングをして、なるべく自分を思いやる選択をしよう。
ここに抵抗がある場合は家族よりも自分にカウンセリングが必要かもしれない。

一方、相手に対してはできる範囲でできることをする。無理しない。

自分が我慢したが最後、
「私が我慢しているのになんだその態度はァァァッ・・・!」と相手を攻撃してしまい、
かえって問題が大きくなるかもしれない。

これは人間の性質であって、個性とは関係のない話。
このような知識を持っておくことも大切。

利害関係は率直に伝える

利害関係があって何かやらかされたとき、何にどう困っているかハッキリ伝える。

ただし、落ち着いたトーンで真剣に・・・だ。
これは後で伝える信頼関係にもつながっている。

一呼吸置いて、何にどう困っているかを率直に伝え、何をしてほしいかも明確に伝える。
感情的に伝えると、「オ、オレは悪くねぇゼ・・・!」と防衛的になって開き直る可能性が高まる。

下手すると面白がって次もやるようになる。

真剣に伝えたからといって、相手が動いてくれるかどうかはわからない。
少なくとも言わずに溜め込んで爆発するよりはいい。

もし爆発してしまったら、「利害関係があるから怒るのは仕方ねーだろ・・・!」と、
まずは自分に寄り添って、開き直って最後まで怒ってしまおう。

怒ったとしても、あとからフォローできればよいのだ。
いずれにしても、その場の思いつきではやれない。

何かあったら、セルフカウンセリングをしたうえで「次はこうしよう」と仮説検証のプランを立てておこう。

距離感に気づいて調整

子どもは成長する。本来は成長に合わせて距離感が変わる。
自分の一部であった子どもが、自立した人間になって巣立っていく。これが自然の摂理なのだ。

  • 今、目の前の子どもとの距離感はどうだろう?
  • どの程度の自立を認めているだろう?
  • 将来、どんな親子関係を築いていたいだろうか?

セルフコーチングで未来を描き、そこから逆算して今どんな距離感でつきあいたいか決めていこう。
どんなときも、子どもは自立した存在としてその意思や行動を尊重される経験を必要としている。

誰もが人生の主人公

失敗してもやってみたいし、将来を人に決めつけられたくはない。

ただ、尊重とは言いなりになることではない。その意思や行動をまずは理解し、認めることだ。
そのうえで、親の知恵をさずけるのも良いだろう。親の知恵も自立のリソースになる。

自分自身に対しても、

  • 思い通りにしたい自分に気づき
  • 思い通りでなくて腹が立つ自分に気づき
  • どちらも気づいたうえでまずは認める
  • そのうえで今の距離感に合わせて態度をチューニングする

この流れをある程度事前に決めておくと良い。

ここまでのまとめ

身近な人のカウンセリングに必要な条件の土台となるのはカウンセラーの安心安全。

そのためには、

  • 疲労対策
  • 利害関係は率直に伝える
  • 距離感に気づいて調整

人間はできごとが予測可能な範囲のとき安全でいられる。
したがって起こりうる問題に対して予め何をするか決めておくことが大切。

自分自身を安心安全、リソースフルに保ったところで、次のフェーズ「信頼関係」に移行する。
長くなったので「信頼関係」と「問題解決の意思」についてはまた別の機会で・・・。

西たかお(Nishi Takao ニックネーム:ニシティ)
心理カウンセラー。科学的な人間理解に基づく心理カウンセリングで、5,000人以上の悩みの解決をサポート。うつ、自殺予防、グリーフケアなどの領域の心理カウンセリングを得意とする。
以前は、コミュニケーションが苦手なIT・エンジニア系プレイングマネージャー。様々な問題を1人で抱え込み、身体不調からうつに。死ぬことしか考えられない日々の中で心理学を学び始める。同じ思いを抱える人を支援するため、心理カウンセラーとして活動をスタートし、独立開業。
企業の相談室での心理カウンセラー、コミュニケーション指導や少年院での心理カウンセリング、事故災害後のメンタルケアなども経験。
心理カウンセラーの専門家として、10年以上の経験・実績。
平本式では、心理カウンセリングのスーパーバイザーとして、また、瞑想リトリートの企画・アドバイザースタッフとしても活躍している。

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