”躾と勇気づけ”というテーマでアドラー式子育てを解説する第四弾。
前回同様、ステージ2「自立と協力」について紐解いていきます。
プライベートでは歌うことが趣味。
前回は「自分で考えること」について、どのようなアプローチをするかについてお伝えしてきましたが、それと同じくらい大切なもう1つのこと。
それは、「ルールを守ること」。
一般的には、決められたルールを守らなければならない。
というものが多く存在し、疑問に思いながらも従うという選択をする方も多いでしょう。
ですが梶谷さんのアプローチは違います。
どのような伝え方を行っているか、事例を交えてお聞きしていきます。
まず、人と人とが一緒に生活をするうえで最低限守らなければいけないルールは必ず存在しますよね。
守らないと嫌な思いをする人がいる。
そういった共存するうえで必要なルールは守りましょうとしますが、一方で”クラスのルールは変えていい”と言っていました。
クラスのルールは自分たちのクラスで皆が快適に過ごせるようになるためのルールですから、自分たちで話し合って決めたルールを実践して、問題があればまた話し合って変えてもいい。
だからこそ、決めたことは守る。
守れないと思ったときは、”こんな理由で守れない”と自分の意見を伝えてもいい。
自己表現をしてもいい場であるということを伝えるのです。
学校においては、校則をはじめ色々なルールが存在します。
子どもたちが納得し共感できるルールもあれば、そうでないものもあるでしょう。
「これはおかしい」と思うルールは、おかしいと思う理由を添えて上に意見をあげてもいい、としながらも、ルールを変えるには、クラス単位ならまだしも、学年、学校全体・・・と規模が大きくなればなるほど、その労力も比例して大きくなるということ。
その労力を選ぶか否か、それは自分たちで選択していいと伝えます。
実際に子どもたちが起こした行動で、学校全体のルールが変わった出来事がありました。
「下校時間は市区町村のチャイムに合わせて帰りましょう」
というルールがあったのですが、6年生にとってそれはあまりにも早すぎる帰宅時間で、「最後の思い出も作りたいのにこれじゃあ遊べない!」と意見があがりました。
そこで子どもたちは自分たちで話し合った結果、多くの生徒にアンケートを取り、下校時間を遅らせるということにこれだけの人が賛同しているという意見書を校長先生に提出したのです。
ですが校長先生は簡単には頷きませんでした。
「それは君たち高学年の子にとってはいいかもしれないけれど、低学年の子たちはどうだろう?安全に帰さなければならないし、いままで市区町村のチャイムで帰りましょうとしていたものを変えて、新たなルールを守れるのだろうか?」と返したのです。
それでも子どもたちは諦めず、話し合いを重ねた結果、「低学年の子は、僕たちが責任をもって手を引いて帰ります」としたことで認められ、本当に下校時間が変わったのでした。
このように、ルールというものは有無を言わさず守りなさいというものではなく、その必要性がわかったうえで協力し合う心を持ちましょうとしたうえで、疑問に思ったら動いてもいいもの。
大前提として、「このルールはこのためにあって、これを破られるとこんなことが困るから協力してほしい」という目的を伝える事はとても重要です。
ですがもっと重要なことは、ルールに対して疑問が出た時に大人が聞く耳を持つこと。
どうしてそこがいけないと思ったのか、調整できるところはないのかを問いかけ、子どもたち自身の力で進めていけるよう促すことが大切です。
ルールを守るも守らないも自分で決められる
既存のルールを自分なりに解釈し納得したうえで守るもよし
新しく自分で考えたルールを自分で守ることもよし
そうやって自分で考えて行動したことによって他の誰かも助かるということを経験していくと、自分はどんなことでもできる!と自信に満ち溢れた子に育ちます。
自分らしい生き方を、子どものうちから学んでいくのです。
「これはおかしい」と思うことを自由に主張できる。
そして、周りを巻き込んで行動することができる。
そんな素晴らしい経験を、子どものうちから学べる場所。
それが家庭や学校なのではないでしょうか。
安心安全な場所で自分の主張を出すことができ、
行動したことを認められることで自信を積み重ねていけるようにすること。
それがあるべき”躾”の姿なのではないかと思います。
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