元小学校の先生で、現在は子供達と関わる先生に向けた塾「未来学園HOPE」を運営されている梶谷希美さんへのインタビューをもとに、アドラー心理学の考え方を活かした、子育てのヒントをお伝えしていくコラム。
【第一弾】ケースごとにみる対処法シリーズのVol.4では、子どもとの適切な距離感についてお伝えしていきます。
プライベートでは歌うことが趣味。
自分の知りたい情報が手軽に入るようになった世の中。
日々、子育てをするなかで、様々な悩みにぶつかり、対処法を調べるうちに、様々な教育方法に出会います。
そんな様々な教育方針が浸透しつつある世の中で、よく言われる共通点は「叱らない」ということ。
叱らないことが自己肯定感を高めるために必要である、子どもを信じて見守るべきだ、ということは、あらゆる情報を得て頭でわかっている。
でも、いざ子どもを目の前にするとつい叱ってしまう。
口を出してしまう。そんな方は多いのではないでしょうか。
一方で、「叱らないと甘えた子に育つのでは?」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、アドラー心理学の「ヨコの関係」を例に、適切な距離感について紐解いていきます。
私が子供たちと接する時に、一番最初にすること。
それは「信頼関係の構築」です。
それなしに、vol.3でお伝えしたような、自ら動けるようになるための論理的な関わり方をしてしまうと、「愛情がない」と捉えられたり、子供達からも「うるさい」というような態度を取られてしまうからです。
まず信頼関係を築くためには、今できていることや、いいことを口に出して沢山伝えます。
ここで注意したいのは、「褒める」のではないということ。
例えば背筋をピシッと伸ばして座っている人がいるとしましょう。
相手が対等な大人の場合、座っていて偉いね!という言葉を使うでしょうか。
私が子供たちに伝えるのは、「背筋が伸びていて素敵!」「笑顔が素敵!」「こんな素敵なクラスの先生になれて、とても嬉しい!」というような、”純粋に私が思っていること”だけです。
決して上から目線でなく、大人に対して言っても不自然でない言葉であること、本当に自分が思う気持ちであることを、意識して伝えます。
この話をするとよく聞かれるのは、「ナメてくる生徒がいないか」ということですが、もちろんいます。
その場合、相手に対して私はこう言います。
「すごく馬鹿にされているように聞こえるけれど、馬鹿にしている?」と。
子供達に対して、それほど対等な関係でいることを意識しています。
その信頼関係を築けたうえで、次のステップとして、どんな学校にしたいのか、自分たちの言葉で出た目標を掲げます。
「皆ならもっと出てくると思う!」
と信頼をベースにして引き出していくと、クラスの目標が定まり、そこで決まったクラスの目標に対して、Vol.3でお伝えした時間を守る例のように、ロジカルに動いていく、という関わり方をしています。
親として、子どもは、一番身近にいる存在。
自分ひとりでは何もできない産まれたての頃から育てていると、どうしても「失敗させたくない」「正しい子に育ってほしい」「将来成功してほしい」という親心から、口を出してしまいがちです。
でも心のどこかで、口を出す自分に、叱ってしまう自分に嫌気がさしてしまっていませんか。
叱ってはいけない、褒めなければいけない、と「〇〇しなければいけない」に囚われてしまっては、いつしか子どもを腫れもののように接してしまい、「ヨコの関係」が崩れやすいものです。
あなたにはあなたの考えがあるように、子どもにも子供の考えがあります。
どちらも同じ人間で、考え方に、決して優劣をつけるものではありません。
一方で、あなたの大切にしている価値観を我慢して変えるということでもありません。
自分自身への尊厳が欠けてしまっては、子どもとの適切な距離感が築けなくなってしまいます。
自分ではそう思っていること。
でも、相手もそう思っているとは限らないということ。
自分の考えも、相手の考えも、同じテーブルの上に出すように、平等に尊重することによって完全な「ヨコの関係」が築け、そうして築き上げていく信頼関係がベースにあってはじめて、これまでお伝えしてきたような”目的論コミュニケーション”が成り立つのです。
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